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魚肉ソーセージのゴミから考える「餌付け」の是非

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土曜日ですね。
スタッフは海。自分は店で器材メンテナンスの一日です。

ダイブテリーズ

こんにちは。
PADIインストラクターの我妻です。

突然ですが、皆さんはダイビング中に海に落ちている「ゴミ」を意識したことはありますか?
私たちは、数年前からスタッフとお客さまが一緒になって、ダイビング中に見かけた水中ゴミを拾う活動を続けています。

「海をもっときれいにしたい」
「大好きな海の生き物たちを、人間の出したゴミから守りたい」

そんな強い思いがある一方で、実は「私たちが拾えるゴミなんて、広大な海全体から見ればほんの小さな一握りに過ぎない」と、無力感を覚えることもあります。
それでも、私たちはこの活動をやめません。
なぜなら、その「小さな一歩」の積み重ねこそが、確実に未来の豊かな海へとつながっていると信じているからです。

しかし、昨日私たちが拾い上げたある一つのゴミは、単なる「うっかり落としてしまったポイ捨てゴミ」とは全く異なる、とても複雑で、かつ深刻な問題を私たちに突きつけてきました。

海を愛するすべてのダイバーへ。その「楽しさ」は、誰を傷つけていますか?
魚肉ソーセージのゴミから考える「餌付け」の是非

ダイブテリーズ

砂漠のような海底にぽつんと取り残された、見覚えのあるオレンジ色のビニール。
それが昨日回収した、魚肉ソーセージのパッケージです。

水中に残された、オレンジ色のパッケージが意味するもの

ダイビングやスノーケリングを楽しまれる方なら、これを見た瞬間にピンとくるかもしれません。
そうです。
おそらくこれは水中で魚を呼び寄せるために使われた、「餌付け(フィードイン)」の痕跡です。

なぜこれが海に沈んでいるのか。
理由は容易に想像がつきます。
「魚肉ソーセージを水中でちぎって魚に与えれば、目の前にたくさんの魚が集まってくる。それを見たお客さまが大喜びするし、素晴らしい写真や動画も撮れる。だから喜んでもらうために持ってこよう」

そう考えた人間が、水中でパッケージを破り、中身を魚に与え、その剥ぎ取ったプラスチックのゴミをそのまま海へ放置した(あるいは、ちぎるのに夢中になって水中へ流してしまった)のです。

「お客さまが喜ぶから」――一見すると、ゲストを満足させるためのホスピタリティのように思えるかもしれません。
しかし、これは非常に短絡的で、独りよがりな考え方だと言わざるを得ません。
今回はこのゴミをきっかけに、水中での餌付けの是非について、世界的な動向も踏まえながら皆さんと一緒に深く考えていきたいと思います。

そもそも、なぜ「魚肉ソーセージ」での餌付けがダメなのか?

「魚が喜んで食べているんだから、別にいいじゃないか」「プラスチックのゴミさえ持ち帰れば、餌をあげること自体は問題ないのでは?」そう思う方もいるかもしれません。
しかし、水中での餌付け、特に「魚肉ソーセージ」などの人間用の加工食品を与える行為には、海全体の生態系を脅かす多くのリスクが潜んでいます。

1. 魚の健康を著しく害する(高塩分・添加物)

魚肉ソーセージは、人間の味覚や栄養バランスに合わせて作られた加工食品です。
保存料や着色料、調味料、そして小さな魚にとっては致命的とも言える大量の「塩分」や「脂質」が含まれています。
これらを日常的に摂取した魚は、内臓疾患を引き起こしたり、本来の寿命を全うできなくなったりすることが研究で明らかになっています。

2. 生態系のバランスが崩れる

特定の場所で人間が餌を与え続けると、その餌を好む特定の種類の魚だけが異常に繁殖したり、逆に他の臆病な魚がその場所から追いやられたりします。
また、魚が「人間から餌をもらうこと」に慣れてしまうと、海藻をつついたり岩肌のコケを食べたりといった、本来彼らが担っている「海の掃除屋」としての役割を果たさなくなります。
その結果、藻類が異常繁殖してサンゴが死滅するなど、ドミノ倒しのように生態系が崩壊していくのです。

3. 魚の野生を奪い、攻撃性を高める

餌付けされた魚は、人間を「ダイバー」としてではなく「餌をくれる動く物体」として認識するようになります。
ダイバーの姿を見ただけで狂ったように突進してくるマダイなどに出会ったことはありませんか?
野生の警戒心を失った魚は、時にダイバーを負傷させる原因になります。
さらに、外敵や密猟者に捕食されやすくなるというリスクも背負うことになります。

世界のスタンダードは「ノータッチ・ノーフィード」

ダイブテリーズ

では、世界に目を向けてみましょう。
ダイビング先進国や、環境保護に力を入れている世界の主要なダイビングエリアでは、水中での餌付けについてどのようなルールが敷かれているのでしょうか。
結論から言うと、現在のグローバルスタンダードは「完全なる餌付けの禁止(No Feeding)」です。

世界基準のダイビングやスノーケリングの環境保護ガイドラインであるGreen Fins(グリーン・フィンズ)でも、水中での禁止事項として明確に「魚への餌付け」を掲げています。

地域・国 餌付けに対する規制・対応の現状
グレートバリアリーフ
(豪州)
国立公園法により、商業的な魚への餌付けは厳しく規制・禁止されています。
ハワイ
(米国)
マリンスポーツにおける野生生物への餌付けは、生態系保護の観点から法律やローカルルールで強く制限されています。
東南アジアの保護区 タイやフィリピンの国立公園、環境保護区では、餌付け行為に対して高額な罰金が科せられるケースが増加しています。
国際基準
(Green Fins)
世界中の多くのダイブショップが加盟。餌付けは「サンゴや生態系を破壊する行為」として完全にNGとされています。

世界では、環境を守りながら観光業を継続する「サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)」が当たり前の前提となっています。
そんな中、いまだに魚肉ソーセージを水中に持ち込んで魚を呼び寄せているようなスタイルは、国際的な視点から見れば「時代遅れ」であり、海を荒らす恥ずべき行為として非難の対象になるのです。

いまだにこんなことをしているインストラクターがいるとしたら

もし、いまだに日本のどこかの海で、プロであるはずのダイビングインストラクターやガイドが、自ら魚肉ソーセージを仕込んでお客さまを案内しているのだとしたら……。
それは「プロフェッショナルとして、非常に大きな問題がある」と言わざるを得ません。

プロの役割とは何でしょうか。
ただ単に、その場にいるお客さまを一時的に楽しませて、お茶を濁すことでしょうか?
決してそうではないはずです。

私たちインストラクターの本当の使命は、「海のありのままの美しさと尊さを安全に伝え、海をリスペクトするダイバーを育てること」です。

「手っ取り早く魚が集まるから」という安易な理由で餌付けを行い、さらにはそのゴミを水中に残していくような行為は、自らの手で自分たちの仕事場(海)を破壊しているのと同じです。
また、それを見たビギナーのダイバーやスノーケラーが、「あ、海で魚にソーセージをあげてもいいんだ!」と誤った認識を持ってしまうという、最悪の悪循環をも生み出します。
環境に対する知識をアップデートせず、目先の利益や集客のために海を切り売りしているガイドは・・・。ダイビングサービスなどで、「魚肉ソーセージ」などを販売しているのも・・・。

私たちが目指べき、これからのダイビングのカタチ

もちろん、目の前にたくさんの魚が集まってくる光景が「楽しい」「嬉しい」と感じる人間の心理そのものを全否定するつもりはありません。
きらきら輝く魚たちに囲まれる体験は、確かに魅力的です。
しかし、その「楽しさ」が、人間の都合によって不自然に作り出されたものだと知ったとき、私たちは本当に心の底から感動できるでしょうか。

不自然に集められた魚を見るよりも、

  • 広大な砂地に身を潜める生き物を、ガイドのプロの目、ダイバー自身の目で見つけ出したときの感動
  • 潮の流れに乗って、自然に回遊してくる魚の群れの圧倒的な生命力
  • サンゴの隙間でひっそりと暮らす幼魚たちの健気な姿

そうした「ありのままの野生の姿」を観察すること、自然のサイクルに自分たちが「お邪魔させてもらっている」という感覚を持つことこそが、ダイビングというアクティビティの本当の醍醐味であり、大人の遊びとしての奥深さではないかと思うのです。

小さな一歩を、一緒に踏み出しませんか?

昨日拾った、たった一枚のオレンジ色のビニール。
それは、人間のエゴと、知識の不足が海に残していった悲しい爪痕なのでしょう。

私たちが続けているゴミ拾い活動は、本当に小さなものです。
でも、こうして拾ったゴミから「なぜこれがここにあるのか」「これからの海をどうしていくべきか」を皆さんと一緒に考え、発信していくことで、その価値は何倍にも膨らむと信じています。

ダイバーは、水中の世界の現実を、自分の目で直接見ることができる特別な存在です。
だからこそ、海を傷つける側ではなく、海を守り、伝える側の存在でありたいですよね。

もし皆さんがどこかの海で「餌付け」のシーンを見かけたら、あるいはそれを勧められたら、「それは本当に海のためになるのかな?」と、一歩立ち止まって考えてみてください。
そして、ありのままの自然を愛せるダイバーであってください。

私たちの小さな意識の変化が、きっと、5年後、10年後のもっと美しい海をつくっていきます。
美しい日本の海を未来へつなぐこと。
次の世代、その次の世代へつないでいくこと。
私自身がダイビングを始めてから、海の中の環境も大きく変わっています。たった40年余りで。

これからも、素晴らしい海を一緒に守りながら、最高のダイビングを楽しんでいきましょう!

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TORU

我妻 亨(わがつま とおる) PADIコースディレクター No.801010 ダイブテリーズのオーナー兼史上最強雑用係 ダイビングは42年目。PADIインストラクターは38年! 日本国内の南の島のリゾートガイドダイバーから1990年にPADIコースディレクター認定、現在に至る。 ダイビングに関してのことならなんでもご相談ください。 ダイビングのこと、ダイビングの中の話など、書きますのでぜひよろしく!もちろん日常のつぶやきも!いろいろ書くのでお楽しみに!

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