「できる」から「魅せる」へ!
日曜日。
東海地方も梅雨入り。
天気がすっきりしない日でも、一歩海に飛び込めばそこには最高のブルーが広がっています。
店内のダイビングプールもシートを外し、夏仕様。
水温も多少の変化はありますが27度以上をキープしています。

こんにちは!
PADIコースディレクターの我妻です。
今日は、プロフェッショナルへの第一歩である「ダイブマスターコース(DM)」のスキルワークショップ。
海はワールドオーシャンディイベント@大瀬崎でした。(World Ocean Dayは明日6/8です。)
プロを目指す候補生たちにとって、このワークショップは非常に大きな転換点のはず。
なぜなら、これまで楽しむ側(ファンダイバー)として磨いてきたスキルを、今度は「人に見せ、教えるためのスキル」へと昇華させなければならないからです。
このブログでは、私がコースディレクターとして最も大切にしている「『スキルができる』から『スキルをお手本として見せる』への意識改革」、そして「言葉に頼らず、体現(デモンストレーション)で伝えることの真価」について書いてみたいと思います。
「できる」から「魅せる」へ!
ダイブマスターコース・スキルワークショップで学ぶプロのデモンストレーション
ぜひ読んでみてください。
「自分が潜れる」と「プロとして見せる」の決定的な違い
ダイブマスターコースに参加する皆さんは、すでにレスキューダイバーの資格を持ち、それなりの経験を積んできた素晴らしいダイバーたち。
マスククリアも、レギュレーターリカバリーも、ホバリングも、自分自身の手で問題なくこなすことができます。
しかし、ワークショップの冒頭で私はいつも、候補生たちにこう問いかけます。
「今やったスキル、初めてダイビングするオープンウォーターコースの参加者が見て、真似できると思う?」
多くの候補生が、この問いにハッとさせられます。
自分が潜るためのスキルは、極端な話、「結果として目的が達成されればOK」です。
- マスクに水が入ったら、パッとクリアできればいい。
- レギュレーターが外れたら、素早く回収して口に戻せればいい。
そこには「無駄のない素早い動き」や、あるいは「自分なりの慣れた癖」が含まれています。
しかし、プロとして見せる「デモンストレーション(お手本)」は、全くの別物です。
初めて水中世界に飛び込み、不安と緊張でいっぱいの生徒ダイバーの目線に立たなければなりません。
彼らは、プロの滑らかな動きの「どの部分が重要なのか」を瞬時に見抜くことはできないのです。
私たちが目指すのは、ただのクリア(達成)ではなく、「スキルの各プロセスが分解され、強調され、誰が見てもそのメカニズムが理解できる芸術的なお手本」です。
この意識の切り替えこそが、ダイブマスターへの第一歩となります。
なぜ水中では「言葉」ではなく「お手本」なのか?
陸上であれば、「まずここに指をかけて、次にここをこうして……」と言葉で説明することができます。
しかし、私たちは水中という「言葉が通じない世界」で教えるプロフェッショナルです。
もちろん、ダイビング前(ブリーフィング)に陸上で手順を説明することはできます。
しかし、いざ水中に潜り、冷たい水に触れ、浮力を感じている状態の生徒ダイバーは、陸上で聞いた言葉の記憶を100%呼び起こすことは困難です。
視覚情報がすべてになります。
言葉での説明に頼ろうとすると、水中でのハンドシグナルが複雑になりすぎたり、何度もやり直させたりして、生徒をさらに混乱させてしまいます。
「百聞は一見に如かず」を水中で体現する
お手本として見せることで、やり方が直感的に理解できる。
これこそが、デモンストレーションだと考えています。
例えば、「レギュレーター・リカバリー(リーチ法)」を例に挙げてみましょう。
自分がやるだけなら、右手を右斜め後ろに回して、ホースを引っ掛けて持ってくれば1秒で終わります。
これを「お手本」にする場合、以下のように動きを徹底的に分解(シークエンス化)し、強調(エグザジェレイション)します。
- 「今からやります」とアイコンタクトをとり、注目を集める。
- レギュレーターを口から離し、一呼吸分の泡を吐き出しながら(気道閉塞の防止をアピールするため、泡を出し続ける)、右後ろ側にポイと落とす。
- 【強調】体を少し右に傾け、右手を右太もものあたりから、大きく後ろへ回す。
- 【強調】シリンダーの底を撫でるように大きく腕を回し、ホースを腕に引っ掛けて前方に持ってくる。
- レギュレーターの上下(向き)を正しく確認したことを、目線と手の動きで示す。
- 口に戻し、息を吐いてクリアする(またはパージボタンを押してクリアする)。
- 「できました!」と満面の笑顔でOKサインを出す。
この一連の動きを、スローモーションのように滑らかに、かつ各ステップを静止(ポーズ)させながら見せることで、生徒は言葉がなくても「あ、手を大きく回せば引っかかるんだ」「向きを確認してからくわえるんだ」というメカニズムを視覚的に理解します。
言葉を排し、身体の動きだけで全てを語る。これが、ダイブマスターに求められるスキルのクオリティです。
本日のワークショップ:候補生たちの変化
今日のスキルワークショップでは、PADIの「基本スキル」を一つずつ見直し、デモンストレーションレベルへとブラッシュアップしていきました。
最初は、どうしても「いつも通り早くやってしまう」候補生たち。
「これでどうですか?」とやって見せてくれますが、動きが早すぎて、どこがポイントなのかが伝わってきません。
そこで私は、彼らの動きのどこが「生徒にとって分かりにくいか」をフィードバックし、時には悪い見本(NG例)を見せながら、徹底的に動きをスローダウンさせました。
劇的に変わった「マスク脱着」
特に劇的な変化が見られたのは「マスクの脱着およびクリア」。
多くのダイバーは、マスクを外した瞬間、鼻から水が入るのを防ぎたいために、すぐに次の動作(マスクを直す、またはクリアする)に移りたがります。
自分がやる分にはそれでも問題ありません。
しかし、お手本としては、マスクを完全に顔から外した状態で、「マスクが無くても私はこれだけ落ち着いていますよ」という『安心感』をアピールする時間(タメ)が必要です。
プロがパニックにならず、穏やかに呼吸している姿を見るだけで、恐怖心は一気に和らぐからです。
「マスクを外した後、心の中で3秒数えて、目を開けて私を見てごらん」とアドバイスしました。
最初は不安そうだった候補生も、意識して「タメ」を作ることで、見違えるほどエレガントで、周囲に安心感を与えるデモンストレーションへと変わっていきました。
スキルができるようになるにつれ、候補生たちの表情から焦りが消え、「見せる喜び」のような余裕が生まれ始めるのを見るのは、コースディレクターとして最高に嬉しい瞬間です。
コースディレクターとして伝える、プロの「心構え」
ダイブマスターという資格は、単に「ガイドができる」「講習のアシスタントができる」ということだけではありません。
ダイビングという素晴らしいアクティビティにおいて、「背中で語るリーダー」になるということです。
ダイバーは、私たちが思っている以上に、プロの「一挙手一投足」を細かく見ています。
水中での美しいたたずまい、無駄のないフィンキック、トラブルの際に見せる冷静な判断、そして何より、心からダイビングを楽しんでいる笑顔。
言葉の通じない水中だからこそ、私たちの体そのものが、ダイビングの教科書になります。
今回のワークショップを通じて、「スキルをマスターする」ことの本当の意味を理解してくれたと思っています。
彼らが今後、実際の講習の現場で生徒の前に立ち、その美しいお手本で多くのダイバーを安心させ、感動させる日が来るのが今から待ち遠しくてなりません。
最後に:一緒にプロへの階段を上りませんか?
ダイビングを始めて、「もっと上手くなりたい」「この海の感動を誰かに伝えたい」と思ったなら、ぜひダイブマスターコースの扉を叩いてみてください。
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一つひとつのスキルを分解し、身体に染み込ませ、「お手本として見せる」プロの技術へ、私たちが責任を持ってステップアップをサポートします。
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