「OWなら18m、AOWなら30m」は本当? PADI最大深度の本当の意味
皆さんこんにちは。
PADIコースディレクター、ダイブテリーズの我妻です。
今日は定休日。
お休みをいただいています。
「OWで18m、AOWで30mまで潜れる」は本当?
PADI最大深度の本当の意味
今日は、少し誤解されやすい『最大深度』についてお話ししたいと思います。
ダイビングを始めようとネットで調べると、必ず出てくるこのフレーズ。
「PADIオープンウォーターを取れば18mまで潜れます!アドヴァンスを取れば30mまでOK!」
皆さんも一度は聞いたことありますよね。
僕らプロも正直、説明が楽なのでついこう言ってしまいがちです。
もちろん安全管理や保険の観点から、お店ごとに18mという明確な線引きを設けるのはプロとして当然の判断です。
でも、これ、半分正解で半分は大きな誤解なんです。
結論から先に言います。PADIの18mとか30mという数字は、「コース中に潜っていい最大深度」のルールであって、「認定されたら、その深度まで安全に潜れることを保証するライセンス」ではありません。
ここに、多くのダイバーと僕ら指導する側との間にある、大きな認識のズレがあります。
PADI規準って、何の数字なのか
PADIには「スタンダード(規準)」という、コースを開催する上で絶対に守らなければいけないルールブックがあります。
これはインストラクター向けの法律みたいなものです。
ここにこう書いてあります。
- オープンウォーター・ダイバー・コースの海洋実習1,2回目の最大深度は12mまで。
- 3,4回目の最大深度は18mまで。
- アドヴァンスド・オープンウォーター・コースのディープ・ダイブの最大深度は30mまで。
お気づきですか?
これは全て「コースを教えている最中に到達していい最大深度」の話なんです。
自動車教習所には教習中のルールがあります。でも、そのルールがそのまま卒業後に「どこでも運転していい」という意味ではありません。公道では交通状況や道路環境に応じて、自分で判断しながら運転します。それと同じように、この数字はあくまでトレーニング中の安全を担保するための上限なんです。
僕らコースディレクターが一番神経を尖らせるのはここです。
この規準を1mでも破ったらいかん!と。
でも、この数字がいつからか独り歩きして、「認定後の効力」として語られるようになってしまった。
じゃあ、認定されたらどこまで潜っていいの?
ここが一番大事な話です。
PADIの教材には確かに「推奨深度」という言葉が出てきます。
オープンウォーターなら18m、アドヴァンスドなら30mを推奨しますよ、と。
でも、そのすぐ後に、もっと大事なことが書いてあるんです。
「常に自分のトレーニングと経験の範囲内で潜りましょう」
つまり、本来の考え方はこうなんです。
あなたが安心して潜れる深度は、これまで積み重ねてきた経験の範囲です。
例えば、あなたがオープンウォーター講習を伊豆の穏やかなビーチで受けて、最大深度が10mで終わったとします。
ログブックには最大深度10mと記録されている。
この人が翌日、沖縄で「私、OWだから18mまで大丈夫です!」と言って、いきなり18mの沈船に行く。
これは本来おすすめできる潜り方ではありません。
なぜなら、あなたはまだ18mを経験していないから。
10mまでしか知らない人が、いきなり倍近い深度に行くのはリスクでしかない。
耳抜きの感覚も、空気の減りも、寒さも、見える景色の暗さも全部違う。
本来なら、インストラクターと一緒に11m、12mと少しずつ深度を伸ばしていくのが、あるべき姿なんです。
Cカードは免許証ではありません。
車の運転免許のように「このランクを持っていれば法的にここまでOK」という効力は、ダイビングの世界には存在しないんです。
Cカードは「ここまでのトレーニングを修了しました」という認定証です。
でも、それは経験まで証明するものではありません。
もし経験したことのない深度、初めてのドリフト、初めてのナイトダイビングに挑戦するなら、必ずその分野を専門とするインストラクターのガイダンスを受けてくださいね、というのがPADIの本当のメッセージなんです。
なぜこの誤解は広まったのか?僕らプロの責任です
では、なぜ「OW=18m」という分かりやすい図式が広まったのか。
僕は分かりやすさを優先してきた結果なのかもしれません。
「経験の範囲内で」というのは、一人ひとりのログブックを見て、その人の経験を聞いて、寄り添ったアドバイスをしなければいけません。
すごく手間がかかるし、時には「今日はその深度はやめておきましょう」とお客様にNOと言う勇気も必要です。
それに比べて「OWだから18mまで大丈夫ですよ!」は分かりやすい。
集客のキャッチコピーにもなる。
アドヴァンスドコースも「30mまで行けるようになります!」と言った方が売りやすい。
僕らが、分かりやすさを優先するあまり、本質を十分に伝えきれてこなかった結果なのかもしれません。
耳が痛いですが、これはコースディレクターとして業界全体で反省すべき点だと思います。
ログブックこそが、あなたの本当のライセンスです
だから皆さんにお願いです。
Cカードのランクを見るのをやめて、自分のログブックを見てください。
ログブックには、あなたが歩いてきた海の歴史が書かれています。
そこに書かれた「最大深度」「潜水時間」「経験本数」「どんな環境で潜ったか」こそが、あなたの本当の実力であり、次にどこまで行けるかを決める最も大切な判断材料です。
もし、講習以来ずっと10m以内でしか潜っていなくて、久しぶりに20mに行きたいと思ったら。迷わずショップに「20mは久しぶりなので、浅いところから慣らしていきたい」と言ってください。
それは恥ずかしいことではなく、最もカッコいい、最も上級者な判断です。
ダイブテリーズでは、初めてご一緒するお客様には「Cカードのランク」と合わせて「これまでの経験深度」をお伺いしています。 ちなみに、当店のOWDコースでは、安全を担保したうえで可能な限り講習中に18mを実際に経験していただくカリキュラムを組んでいます。
認定後に「18m未経験」というギャップで不安になってほしくないからです。
そこから、その日の海を一緒に作っていくのがプロの仕事だと思っています。
ランクはゴールじゃない。海へのスタートラインです。
あなたの次の1本が、経験の1ページとして安全に積み重なるように。
まずは自分のログブックを、今一度開いてみてください。
Cカードは、あなたが学んだ証です。
でも、ログブックは、あなたが経験してきた証です。
海はCカードではなく、その経験をちゃんと見ています。
今日、久しぶりにログブックを開いてみませんか。
その経験を少しずつ増やしながら、海の世界を広げていきましょう。
海は18mになった瞬間に急に危険になるわけでも、19mになった瞬間に突然何かが変わるわけでもありません。
危険なのは数字ではなく、「自分が経験していない世界へ、一気に飛び込むこと」です。
次の海でも、皆さんと一緒に笑顔で潜れる日を楽しみにしています。
久しぶりに海へ行く方は、出発前に一度ログブックを開いてみてください。
「最近どんなダイビングをしてきたかな?」
「最後に18m近く潜ったのはいつだったかな?」
そんな振り返りが、安全な一本につながります。
もし判断に迷ったら、ログブックの写真をLINEで送っていただければ、一緒に見ながらご相談に乗ります。
「少し興味がある」
それだけでも十分です。
分からないことがあれば、お気軽にLINEからご相談ください。


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