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夏が終わる? いや、ダイバーの夏はここからです。

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浜松 ダイブテリーズ
こんにちは!
浜松のダイブテリーズの我妻です。

8月も終盤に差し掛かりました。
お盆休みの賑やかさが嘘のように静まり返り、夕方に店のドアを開けると、吹く風の匂いがわずかに変わり始めているのを感じます。
朝夕の空気にはかすかな涼しさが混じり始め、暦のうえでも、そして日常の皮膚感覚としても、夏が少しずつ出口に向かっていることを実感する時期です。

この時期になると、よくお客様や街の方から「もうすぐ夏も終わりですね。ダイビングのシーズンもそろそろ終わりですか?」というお声をいただきます。

海水浴場が閉鎖され、海の家が解体され、テレビのニュースで秋の気配が報じられるようになると、世間の感覚としては「海の季節=終わり」になるのは、とても自然なことです。

ですが、私たちダイバーにとって、そしてこの伊豆の海を長年見つめ続けてきた人間にとって、答えは真逆になります。

「いいえ、実はここからが、ダイビングの面白い季節なんです。」

今日は、ただ純粋に「なぜ8月下旬から秋にかけての海がこれほどまでに美しく、ダイバーの心を捉えて離さないのか」という話を書いてみたいと思います。


気温と水温の「1ヶ月~1か月半のタイムラグ」

まず、海の中の季節は、陸上の季節からおよそ1ヶ月から1ヶ月半ほど遅れてやってきます。

陸上では8月上旬から中旬にかけてが暑さのピークですが、海水は空気よりも熱しにくく、冷めにくいという性質を持っています。
膨大な量の海水が太陽の光を浴び続け、じっくりと温められて最高水温に達するのは、実は8月下旬から9月、時には10月の上旬にかけてなのです。

夏の盛りに潜ると、水深15メートルや20メートルの深度に降りた瞬間、ヒヤッとする冷たい水の層(サーモクライン)にぶつかることがよくあります。
「表層はぬるいけれど、下はひんやりしている」というのが、初夏から8月中旬までの伊豆の海の典型的な姿です。

しかし、8月下旬を迎える頃になると、夏の間に温められた水が厚くなり、温かく快適な水域が広がってきます。

ウェットスーツを着て水に入った瞬間、身体がふんわりと包み込まれるような心地よさ。
あたたかな海水の中で吐き出すレギュレーターの呼吸音を聞いているだけで、陸上の蒸し暑さや日々の雑多な疲労がすーっと溶けていくような感覚を味わえるのは、まさにこの時期ならではの贅沢です。

黒潮の贈り物「季節来遊魚」との出会い

そして、この時期の最大の魅力は、なんといっても水中世界が劇的にカラフルになること。
浜松 ダイブテリーズ

夏から秋にかけて、南の海から北上してくる強大な暖流「黒潮」に乗って、普段の伊豆には生息していない南方系の魚たちの幼魚が、たくさん運ばれてきます。
これを私たちは「季節来遊魚」と呼びます。

8月上旬までは影を潜めていた鮮やかな黄色、青、オレンジの小さな魚たちが、8月下旬を境に、ゴロタ石の隙間やサンゴの周囲に一気に姿を現し始めます。

ソラスズメダイの群れが青色の影をつくり、ミツボシクロスズメダイがイソギンチャクの周囲で可憐に舞い、時には鮮烈な黄色のチョウチョウウオの幼魚が、ちょこまかと可愛らしく泳ぎ回る。

日本の海でありながら、まるで南国の海に迷い込んだかのような華やかさ。
けれど、沖縄や南の島々の海とはどこか違う、伊豆独特の落ち着いた岩礁の風景の中にそれらの色彩が溶け込んでいる様は、どこか幻想的でもあります。

彼らは冬の訪れとともに水温が下がると生き残ることができないものがほとんど。
文字通り「その季節だけ」の儚い命の輝きです。
だからこそ、8月下旬から秋にかけて彼らと水中であいさつを交わす時間は、一期一会の特別な愛おしさに満ちています。

「青さ」を取り戻す静かな水界

もうひとつ、忘れられないのが「透明度の劇的な向上」です。

浜松 ダイブテリーズ
2025年9月上旬の大瀬崎の水中!

初夏から8月中旬にかけての海は、どうしても緑っぽく濁りやすい時期(いわゆる春濁りや夏濁り)になります。
命が芽吹き、育まれるための豊かな濁りなのですが、視界という点では少し物足りなさを感じることもあります。

海況が良ければ、太平洋から入ってくる青く澄んだ水が沿岸まで届くこともあります。
秋になると、ある日突然、海が青くなることがあるのです。

ある日、海に飛び込んだ瞬間、視界が「スコーン!」と抜けるとき。

透明度がいい日に水面から下を見ると、15mくらい下にいるダイバーが見えることがあります。
あれは気持ちいいんですよね。

青く澄み切った水の中で浮力を整え、無重力のような感覚で佇んでいると、自分が空を飛んでいるのか、水中にいるのか分からなくなる瞬間があります。

こういう時間があるから、僕はダイビングを続けているのかもしれません。

 

喧騒が去り、自分のペースで海と向き合える時間

技術的・環境的な魅力だけでなく、精神的な面でも、8月下旬からの海はとても穏やかで豊かな時間を提供してくれます。

7月や8月上旬のお盆休み期間中、伊豆の現地サービスやビーチは大変な熱気に包まれます。
たくさんのダイバーや海水浴客で賑わう海は活気に満ちていてもちろん楽しいものですが、どうしてもエントリー口で並んだり、水中で他のグループとすれ違ったりと、どこか慌ただしさが残るのも事実です。
それが8月下旬を境に、一気に静けさを取り戻します。

早朝、ショップを出発して車を走らせる道路も、海沿いの駐車場も、落ち着いた時間が流れるようになります。

エントリー口で急かされることもなく、波の音を聴きながらゆっくりと機材をセッティングする。
水中に降りたら、ひとつの根(岩場)の前で立ち止まり、マクロ生物の動きをじっくりと観察する。
写真のピントを合わせるために、呼吸を整えて静かに待つ。

そんな「自分だけのペース」で海と対話できる環境が整うのが、この季節です。

ダイビングは本来、誰かと競うものでも、急いで目的地に向かうものでもありません。
自分の身体の感覚を研ぎ澄まし、呼吸の音に耳を澄ませ、目の前の小さな命や壮大な景観に思いを馳せる時間です。

喧騒が去った8月下旬の海は、そうした「本来のダイビングの贅沢さ」を思い起こさせてくれます。

夏に得たものを、秋に深める

この夏、ダイビングライセンス(OW)を取得された方や、数年ぶりに海へ復帰された方も多くいらっしゃいました。

最初のうちは、機材の扱いや中性浮力のコントロール、耳抜きなどに必死で、「海を楽しむ余裕があまりなかった」「あっという間に潜水時間が終わってしまった」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
それは誰もが通る道ですし、ごく自然なことです。

ですが、せっかく夏に掴んだその感覚や水への慣れを、夏の終わりとともにリセットしてしまうのは、あまりにも勿体ないと感じてしまいます。

水温が高く、海が青く、そして混雑のない8月下旬からの海こそ、肩の力を抜いて「潜ることそのものの楽しさ」を噛みしめられる絶好の機会です。

夏に感じた「もう少し上手に浮力をとりたいな」「もっと余裕を持って魚を観察したいな」という小さな思い。
それを温かい秋の海で焦らずにひとつひとつ確かめていく作業は、ダイバーとしての引き出しを大きく、そして深くしてくれます。


おわりに

カレンダーが8月の終わりを告げようとするとき、ふと寂しさを覚えるのは、私たちが陸上で暮らす人間だからかもしれません。

けれど、一歩足を踏み入れれば、海の中にはこれから最高の季節を迎えようとしている、生命力に満ち溢れたもうひとつの世界が広がっています。

風の匂いが変わり、空が高くなり始めるこの時期。
海の底には、夏の間には見せなかった静かで、青く、温かい表情が待っています。

もし、夏の疲れが少し溜まっているなと感じたら、あるいは夏が終わってしまうことに少し寂しさを感じたら、思い出してみてください。

ダイバーにとっての「本当の夏」は、まだ終わっていません。

むしろ、ここからです。

さて、今年の秋の海は、どんな顔を見せてくれるんでしょうね。

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TORU

我妻 亨(わがつま とおる) PADIコースディレクター No.801010 ダイブテリーズのオーナー兼史上最強雑用係 ダイビングは42年目。PADIインストラクターは38年! 日本国内の南の島のリゾートガイドダイバーから1990年にPADIコースディレクター認定、現在に至る。 ダイビングに関してのことならなんでもご相談ください。 ダイビングのこと、ダイビングの中の話など、書きますのでぜひよろしく!もちろん日常のつぶやきも!いろいろ書くのでお楽しみに!

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