インストラクターコラムFor Diversオーナーブログ

焦らなくて大丈夫。海の中で『リラックス』するためのちょっとしたコツ

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浜松のダイブテリーズ我妻です。
海の中で「なんだか身体が力んでしまう」「息がうまく吸えていない気がする」と感じたことはありませんか?

講習を終えたばかりのビギナーさんや、少し久しぶりに海へ帰ってきたブランクダイバーさんから、一番よくいただくご相談がこの「水中での緊張と呼吸」についてです。

ライセンスを取るときに、中性浮力の取り方や正しいフォームをしっかり習ったはずなのに、いざ海に入ると身体が固くなってしまう。
呼吸が浅くなって、シリンダー圧の減りも早くなってしまう。
そうすると「周りに迷惑をかけているんじゃないか」と焦ってしまい、さらに呼吸が乱れる……という悪循環にはまってしまう方は、実は決して少なくありません。

長年たくさんのダイバーさんと一緒に海に入ってきた立場から言わせていただくと、水中での緊張や力みは、決して「練習不足」や「スキルの問題」だけではありません。
人間の身体が生理的に起こすごく自然な反応です。

今回は、お店がお休みで静かなデスクに向かいながら、海の中でふっと肩の力を抜き、心から安心するための「考え方とコツ」を少し書いてみようと思います。

そもそも、なぜ水中では身体が力んでしまうのか

浜松 ダイブテリーズ

陸上で生活している私たちが、足のつかない水中に身を置くとき、脳は無意識のうちに「危険かもしれない」という警戒信号を出します。

これは本能的な防御反応です。

警戒信号が出ると、人の身体はどうなるでしょうか。
まず無意識に肩が上がり、手足の指先にぎゅっと力が入ります。
そして、胸の浅いところでハッハッとした呼吸をするようになります。

陸上なら「ちょっとリラックスしよう」と深呼吸をすれば落ち着きますが、水中ではそうもいきません。
なぜなら、ダイビングの呼吸と浮力は密接に結びついているからです。

呼吸が浅く早くなると、肺の中に常に空気が溜まった状態になり、身体が浮きやすくなります。
浮いてしまうのを防ごうとして、無意識に手足をバタバタと動かしたり、さらに息を吐き出そうと力んだりする。
この「浮力への不安」と「身体の力み」がセットになって襲ってくるため、頭の中が「焦り」でいっぱいになってしまうのです。

つまり、あなたが潜っていて「落ち着かない」と感じたとき、それはあなたがヘタだからではありません。
あなたの身体が、慣れない水中環境に対して正常に反応しているだけなのです。

まずは「あ、いま自分の身体は本能で緊張しているんだな」と、客観的に受け入れてあげることから始まります。

脱力のためのコツ①:「吐く」ことから始める

「落ち着くために深呼吸をしましょう」というと、多くの人はまず「息を大きく吸おう」とします。
しかし、水中での焦りを解消したいときは、順番が逆です。

息を吸おうとすると、どうしても胸が大きく膨らみ、さらに浮力がついて浮きそうになってしまいます。
これがさらなる不安を呼びます。

リラックスするための正しい手順は、「吸う」ことよりも、まずゆっくり吐くことを意識してみることから。

レギュレーターから「スーッ」と音を立てるように、ゆっくり長く吐き出します。
吸うことの意識は一旦捨てて構いません。
ゆっくり息を吐くことで、呼吸そのものが落ち着き、身体の動きも少しずつ静かになっていきます。

息を吐いたら、次の息は自然に吸えばいい。

「上手に吸わなきゃ」と頑張る必要はありません。

「吸う」のではなく、「吐く」。
息が苦しい、焦っていると感じたときほど、お腹の底から長〜く息を吐き出すことだけに意識を向けてみてください。

脱力のためのコツ②:身体の「末端」を緩める

浜松 ダイブテリーズ 不安そうな女性ダイバー
緊張しているダイバーを見ていると、よくこんな状態になっています。

緊張しているとき、人は身体の中心部(体幹)よりも、末端(手先や足先、顔の筋肉)に力が入りがちです。

水中で自分が力んでいると感じたら、次の3つのポイントを順にチェックしてみてください。

  1. 手を開く(拳を握らない)
    緊張していると、BCのストラップやゲージを強く握りしめていたり、両手をギューッと握りしめて拳を作っていたりします。
    一度、指を一本ずつ伸ばしてパーの形を作ってみましょう。
    手を開くだけで、腕から肩にかけての筋肉の緊張がすっと抜けていきます。
  2. マウスピースを噛み締めない
    「レギュレーターが外れたらどうしよう」という不安から、奥歯に力が入ってマウスピースを今にも噛み千切りそうになっている方をよく見かけます。
    顎が疲れるだけでなく、首元の筋肉が固まり、頭痛の原因にもなります。
    マウスピースは「噛む」のではなく、唇全体で「包み込む(くわえる)」だけで空気は漏れません。
    奥歯の噛み合わせを少し緩めて、顎の力を抜いてみてください。
  3. 水底やガイドを見ようとして首を反らさない
    前をしっかり見ようとするあまり、首をカメのように上に反らしてしまう姿勢も、身体を固くする原因です。
    首筋が張ると呼吸が通りにくくなります。
    顎を軽く引き、目線だけを少し遠くに向けるくらいが、最も首回りの力が抜けるポジションです。

脱力のためのコツ③:あえて「何もしない時間」を作る

潜っている最中、常にバタ足(フィンワーク)をし続けていませんか?

「泳いで移動しなければいけない」「置いていかれないようにしなきゃ」という思い強いほど、ダイバーは絶え間なく足を動かしてしまいます。
しかし、動き続けている限り、自分の浮力状態が安定しているのか、呼吸が整っているのかを判断することはできません。

もし海の中で緊張を感じたら、ガイドやインストラクターに「少し止まりたい」というサインを出して(あるいはチームが立ち止まったタイミングで)、ほんの数秒でもいいので、「手も足も完全に止める」時間を作ってみてください。

身体の動きを止め、膝の力を抜き、水中にただ浮いているだけの状態を作る。

最初は少し怖いかもしれませんが、完全に動きを止めて呼吸だけに意識を向けると、水が自分を支えてくれている感覚が伝わってきます。
「動かなくても、自分はここで浮いていられるんだ」という体感が得られると、脳の警戒信号は一気に消え去ります。

完璧なフォームを目指さなくていい

指導機関が発行するマニュアルには、美しい中性浮力の姿勢やきれいなフィンワークの写真が載っています。もちろん、それらは安全に潜るための理想形ですが、最初から完璧に再現する必要はありません。

海に入る目的は、綺麗に泳ぐテストに合格することではなく、水中の世界を楽しむことです。

足が少し下がってしまってもいい。
呼吸で身体が上下にゆらゆら揺れてしまってもいい。
少し姿勢が崩れてしまってもいい。

思ったように浮けないことがあっても、いったん落ち着いて立て直せばいい。

「完璧に潜らなければいけない」という陸上のプレッシャーを海の中にまで持ち込んでしまうと、せっかくの無重力空間がストレスの場になってしまいます。

海の中は、陸上の重力や日々の忙しさから解放されるための場所です。
海の中では、陸上とは身体の使い方そのものが違います。
重力に逆らって身体を支え続ける必要がない。
だからこそ、力を抜いて水に身体を預ける感覚を覚えると、急に楽になることがあります。

息を深く吐き出し、手のひらをそっと開き、水に身をゆだねる。

次に海へ潜るときは、
「上手に潜ろう」ではなく、
「今日は少し力を抜いてみよう」
くらいでいいと思います。

海の中で、ほんの少し身体の力が抜けたとき。
それまで気づかなかった魚の動きや、光の揺らぎが見えてくることがあります。

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TORU

我妻 亨(わがつま とおる) PADIコースディレクター No.801010 ダイブテリーズのオーナー兼史上最強雑用係 ダイビングは42年目。PADIインストラクターは38年! 日本国内の南の島のリゾートガイドダイバーから1990年にPADIコースディレクター認定、現在に至る。 ダイビングに関してのことならなんでもご相談ください。 ダイビングのこと、ダイビングの中の話など、書きますのでぜひよろしく!もちろん日常のつぶやきも!いろいろ書くのでお楽しみに!

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